コメの高騰・急落から日本の農業を考える

生活クラブカレッジが主催する鈴木宣弘さんを講師とする「日本の農業・コメはどうなる⁉」に参加しました。昨年は減反政策の中でコメが足りなくなり、政府の備蓄米放出も遅れ、価格が高騰してコメ騒動が起きました。一転、今年はコメ余りとなり、コメの値段が急落しています。消費者からは歓迎の声が聞かれますが、廃業する農家が増え、地域農業が存続できなくなり、このままだと近い将来、消費者がコメを買えない事態になってしまうと鈴木宣弘さんは警鐘を鳴らします。鈴木宣弘さんの指摘は以下の通りです。

1. 食料安全保障の崩壊

日本の食料自給率は約38%と言われているが、種や肥料やエネルギーの自給率を考慮すると10%に満たないのが現状。ウクライナ・中東危機で食料・資材争奪戦は激化しており、もはやお金を出せば食糧や生産資材を輸入できる時代ではない。さらに農家は生産コスト高による赤字に苦しみ、廃業が加速している。今年のコメの値段の急落はさらに稲作農家を疲弊させている。このままでは、農業・農村は破壊され、食糧安全保障も損なわれてしまう。

2. 農業問題は消費者の問題

米価下落により、農業をあきらめる人が続出し、耕作放棄地がさらに拡大し、食料自給率は急降下して、食料危機に耐えられなくなる。農村が維持してきた国土の保全、きれいな水の供給、生物多様性の維持、伝統・文化の継承など、多様な機能が失われてしまう。食糧を輸入やフードテック(スマート農業など最新テクノロジーを使った取り組み)に頼るのは、食の安全の観点からも問題が大きい。消費者が地元や国産のものを食べ続けて、国内の農家が安全な食料を将来に渡って生産し続けられる「強い農業」つくっていく必要がある。

3. アメリカに占領されてきた農業

占領期から、アメリカは日本農業を弱体化させ食料自給率を低め、それによって日本人を支配し強国にさせないこと、日本をアメリカの余剰農産物の処分場とする政策をとってきた。以前の学校給食がパンと脱脂粉乳だったことはその表れである。

その後も日本はアメリカ企業の利益のための市場原理主義を受入れ、自動車のために農と食を差し出す政策をとってきた。現在も輸入米のさらなる市場開放や農協組織を外資への差し出すストーリーが展開されている。

4. 規模拡大だけで農村コミュニティは維持できない。

大規模化は必要だが、日本では15ha以上の農家の数は1.7%、面積は27%である。農業生産の4割は中山間、棚田的農地の多様な担い手である。それを結び付けた集落営農組織などの力なくして、洪水防止も水路の掃除も畔の草刈りもできない。小規模を淘汰し大規模に任せるだけでは農地も農村コミュニティも食料供給も維持できない。

5. 輸入や輸出より国内供給力を高めるべき

輸入については、2025年アメリカ米の輸入が59万トンに増え、民間輸入も2024年1,015トンから2025年9万6,834トンに一機に増加した。輸入米が増えると消費者には一時的にメリットに見えても、コメ農家がさらに加速度的にいなくなってしまい、海外からコメが入ってこなくなったら、国民はコメさえも食べられなくなって安全保障上の危機に瀕する。

輸出推進が言われているが、食の安全保障に直結する日本の稲作は、あと5年もすれば崩壊する危機にある。国内の稲作を放置して輸出先行では危機に対応できない。農家を支えて国内供給力を高めてこそ輸出にもつながる。

6. 生産者と消費者の適正価格のギャップを補填する直接支払いを

日本の農家は、世界一過保護されていると誤解されているが、本当は世界一保護なしで踏ん張ってきている。1980年を起点に主要国の農業予算の推移を比較すると、アメリカやEUは7.5倍から4.7倍増加しているが、日本の農業予算は減少している。農業所得に占める補助金の割合も低い。

アメリカでは、生産者にはコメが1俵4,000円だったとしても12,000円との差額が政府から補填される。また消費者には所得に応じて最大約7万円/月の食料購入支援を行っている。

日本においても、消費者が買える価格(2,500円/5kg)と農家に必要な価格(3,500円/5kg)との差額を補填し、消費者・生産者双方を支援する政策が不可欠である。

7. 子ども達の未来を守るために行動することが大切

日本人は一人当たり世界で最も多く遺伝子組み換え作物を消費している。それとセットの農薬グリホサートについては世界的に規制が強まっている中、日本は残留基準値を極端に緩和した。日本は、トウモロコシ100%、大豆94%、小麦90%弱を輸入に依存している。それらすべてにグリホサートと防カビ剤が使用され、トウモロコシと大豆は遺伝子組み換え作物である。また、BSE(牛海綿状脳症)や収穫後(ポストハーベスト)農薬は以前から問題視されてきた。アフラトキシン(発がん性の猛毒のカビ)の港での検査率は輸入全体のわずか7%程度に落ちてきている。

リスクのある輸入品ではなく、今こそ身近な地元の安全・安心な農産物を支えること重要だ。

世界各地で、自国農業、安全な食を守るために、生産者や消費者・市民が立ち上がっている。米国消費者は食品の表示無効化に屈せず独自の流通ルートで対抗した。EU消費者は農薬基準の強化を実現し、減化学肥料・農薬、有機農業の世界の潮流を主導している。スペインでは自国農業を守る大規模デモが起きている。

政府も、加工・流通・小売業界も消費者も、国民の命を守る安全保障の視点から、国産への想いを行動に移してほしい。

 

私たちの食料について深く考えさせられる講演会でした。私たちが国産の安心・安全な食べ物を手にするためには、日本の農業・農村が長く続く必要があります。そのためには、日々の生活の中で安心・安全な地元や国産の食材を買うこととともに、生産者が振り回される今の日本の農業政策にも目を向け、現状を知り、対話を重ねながら、市民目線の政策提言が必要と考えます。