廃墟のガザからのメッセージを受けて
「手に魂をこめ、歩いてみれば」という映画をみました。廃墟のガザで撮影を続ける24才の女性ファトマさんとビデオ通話で連携し続けたイラン人女性監督による1年間の記録です。爆撃を避けて撮影場所はガザ北部を度々移動し、スマホでの通信は途切れがちです。時々爆音も聞こえてきます。食べ物がないと言いながらも、瓦礫の中でファトマさんはいつも笑顔で穏やかに見えます。ガザから一度も出たことはない、外の世界に行ってみたいと言いますが、ガザが自分の住む場所であり、家族やコミュニティやガザの文化に誇りを持っています。度重なる爆撃で家族や友人が殺害されても発信を続けます。ビデオ通話開始から1年後の2025年4月15日、この作品のカンヌ映画祭上映決定の知らせに喜んだ翌日、空爆によりファトマさんを含む家族7人が殺害されてしまいました。あまりにも酷い結末です。
中東ではイスラエルの建国以来、武力衝突を繰り返してきました。1993年にオスロ合意で、当時のパレスチナ解放機構のアラファト議長とイスラエルのラビン首相が和平に合意し、イスラエルのペレス外相と3者にノーベル平和賞が送られました。しかし、1995年にラビン首相は和平反対派に暗殺され、再びパレスチナの混迷は続きます。
パレスチナは、地中海東岸のガザ地区とヨルダン川西岸地区に分断されています。ヨルダン川西岸地区ではイスラエルの入植が続き、ガザ地区はイスラエルに封鎖されています。経済的にも軍事的にも圧倒的に強いイスラエルからの抑圧に対して、2023年10月にガザ地区を実行支配するハマスが奇襲攻撃、それにイスラエルが報復し激しい戦争になりました。2025年10月に人質を解放し「停戦」となったはずでしたが、その後も攻撃は続いています。ガザ地区は東京23区の6割ほどの面積ですが、53%をイスラエルが管理しています。そこに約230万人が住んでいますが、23年10月以降の死者数は確認されているだけで7万5,000人、瓦礫の下にはさらに数千人が埋もれていると言われています。インフラも破壊され、産業活動もままならず、外からの支援物資が頼りですが、検問所はイスラエルがコントロールしていて、食料、水、医薬品などの支援物資の搬入が度々止められて、160万人が深刻な食糧不足に直面しています。和平への道筋は見えず絶望的に感じます。
ネタニヤフ首相は汚職事件で公判中であり、政権は決して盤石ではありません。力で一つの民族や文明を消滅させることはできないということは、イスラエルの人々が一番良く知っているはずです。一方、ガザのファトマさんも、ハマスの新しいリーダーには賛同できないと言っていました。武力では何も解決できません。憎しみを増幅させるだけです。双方の平和を願う市民の想いをつなぐことはできないのかと思いました。
パレスチナを国家として承認している国は、2025年9月時点で、国連加盟国の約8割(約160ヵ国)です。イギリス、フランス、カナダ、オーストラリアなどが、新たに承認しました。日本はアメリカとの関係を配慮し承認していません。平和的な共存を促すために日本も承認するべきです。
